2000年頃のCGAコンテスト会場だったと思う。それまでにCGA作品は、映像技術系かアート系もしくはネタ系のいずれかがほとんどで、一般大衆が認めるようなものにはあまり出会えなかった。そんな状況で大賞作品該当なしが数年続いたCGAコンテストにおいて、新海作品が当然のように大賞を受賞した。叙情あふれる繊細な映像と染み入るようなモノローグが印象的だった。
今作はさらにジワリとしみる。じれったい時間とせつない距離で隔てられた男女が、近づいたり遠のいたりするその速度を主題にしている。主題はこれまでと変わらないが、過去作品の重要な要素であった「SciFi」な設定は本作品では登場しない。アニメが得意とする「フィクション」を排し、実写にもできるだろう脚本で勝負している。よく問われる「なぜ敢えてCGでやる必要があるのか」という問いに対して、本作でひとつの答えを見つけることができた。一言でいうなら「アニメにあるものは全て人が作っている」ということだ。
新海作品に一貫した見所は、風景描写の美しさ。光が丁寧に描きこまれ、空間の広がり、その場の空気感を感じさせる。時にため息さえこぼれる。アニメの風景が実写以上にリアルで美しく思うのは、記憶にある色や形が描かれているからだろう。本当には存在しないけれど、だれの心にも共通する原風景を強調して描く。この絶妙なデフォルメが新海誠の真骨頂であり、脚本に膨らみをもたせていることは間違いない。むしろ、感情の起伏をダイナミックに表現する風景こそが本作のストーリーそのものであるように思う。そのあたりが、実写で足る脚本を敢えてアニメで作ることのヒントだという気がする。物理的な制限を越えられない実写映画に対して、あらゆる点において作者が選択可能で、総力によってテーマを表現できるのがアニメーションの豊かさだろう。本作は脚本のシンプルさによって、逆に映像の豊饒さが堪能できるように思う。
売りであった「個人製作」というスタイルを捨てて、今回は共同製作にした。長編を効率的につくることを選んだということだろう。結果、背景が少し粗くなったような気もするけれど、商業的に成功するためにはもちろん、バイアスなく評価されるためによい選択だと思う。これからは他の商用アニメーションと同じ土俵で戦うことになる。厳しいけれど、CGアニメーションという小さな枠から突き抜けてほしいと思う。本人は望んでいないかもしれないけれど。

by G-Tools , 2008/02/21