まったくの与太話である。正統な青春小説ではあるのだけど、題材が荒唐無稽だ。妻にあらすじだけ話したら、ふうん変な話、とだけ言われた。こんな不可思議な夢をみたんだよ、と熱心に話す時と同じ反応。本人の感じた面白さが伝えられない。大人がまじめに話す内容じゃない。プロットだけ追うとそんな物語なのに、とても面白い。
全体に情報の提示の仕方がうまいからだと思う。時間に沿って並べるのではなく、順序を入れ替えて謎めかしてある。予言というべき断片的な情報は、その後におこる常識はずれな事態を部分的に説明するものの、逆に説明されない謎をより魅力的なものにする。そのバランスがいい。ずんずん引き込まれていく。ストーリーテリングの妙というのだろう。爆笑を誘う儀式が終わってからは、疾風怒涛のごとく物語は展開する。感情で突っ走る青春の勢いに乗せられてしまうと、もう途中では読みやめられない。というか、読みやめ時がみつからない。最後まで読んでしまって、読後はすっきり爽快。
京都という舞台の持ち味に改めて気づいた。森見登美彦の「夜は短かし-」のときも思ったけれど、京都という都市は、不可思議な話を受け入れる懐の深さがあるなあ。荒唐無稽なアイディアでもなぜか馴染んじゃって不自然な気がしない。僕自身、生まれも育ちも京都なので、えこ贔屓しているかもしれないが。
さらっと読みやすく、面白さも分かりやすいので気楽に是非。
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